「糖尿病の『スティグマ』という言葉を見たけれど、何のことですか?」と、最近聞かれました。スティグマというのは「烙印(らくいん)、汚名、恥」といった不名誉の印です。林真理子さんが『成熟スイッチ』という本の中で書いている、「アルバイトの初日から押された『使えない子』の烙印が消えることはありませんでした」の烙印がスティグマですね。 スティグマはいろんな病気と結び付くこともあります。今回のテーマである「糖尿病」と診断された方の中には、最初に診断された時、「嫌だなー、名前に尿が付く病気はなんだかなー」と思った方もいると思います。「糖尿病は自堕落な生活をしたからなると言われた」「糖尿病は脳梗塞、心筋梗塞の原因になると週刊誌に書いてあった」「認知症にもなりやすいそうだ」など、悪い思いが次から次へと出てきますが、本当のところはどうでしょうか? まず、自堕落な生活だけで糖尿病になるというわけでもありません。それよりも、加齢とともに膵臓(すいぞう)などの働きが悪くなることが糖尿病の大きな原因といえます。また、糖尿病のコントロールが悪ければ、合併症のためにいろいろな良くないことが起きやすいのは確かです。しかし、最近の糖尿病の治療の進歩は目を見張るものがあります。血糖の自己測定法が格段に進歩し、新しい薬も続々と出現し、糖尿病で肥満がある場合も肥満の解消が夢ではなくなってきています。しっかりと治療すればスティグマを克服することは十分可能な時代です。だからこそ、スティグマに結び付きやすい「糖尿病」という名前を変更しようという試みが進行中なのです。 |
2023年5月7日